The Juan Delay Prize 2014を受賞して



 第16回世界精神医学会が本年9月、“Focusing on Access, Quality and Humane Care”をテーマにマドリッドで開かれました。その開会式でJuan Delay prizeの授賞式があり、Name change for schizophrenia with updating conceptをテーマに講演してきました。Keynote speechなので日本における病名変更とコンセプトの刷新をとりあげ、そのプロセスと波及効果を中心に話しましたが、 多くの聴衆が熱心に聞いてくれました。

 私の率直な驚きは、その反響の大きさでした。Schizophreniaと診断されることでいかに多くの国の、多くの患者と家族がスティグマと差別に直面し、その解消が大きな課題となっているか痛感しました。

 その打開策として日本精神神経学会が行った病名変更とコンセプトの刷新は、大きな関心を集めました。イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、オランダ、南アフリカ、ウズベキスタンなどから講演スライドの要請があり、ICD-11に反映させてほしいという要望もありました。

 統合失調症の治療は進歩し、いまでは症状寛解だけでなく社会的機能の回復やリカバリーを期待できるようになりました。それを阻むスティグマや差別を解消は、こころのバリアフリーに他なりません。病名変更を機に病気のコンセプトを是正した日本の試みが、本大会がめざす人道的ケア(humane care)の実現に寄与したとすれば、望外の倖せというほかありません。

佐藤光源(理事長)



2014年10月10日更新

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